2021/06/23 08:25
近い将来、日本語学習者とのTTが起こるかもしれない
※TT: ティームティーチング。本来は教員資格を持つ方2名以上で組むスタイルを指す。
現状、日本国内での日本語学校ではほとんど、日本人日本語教師が教壇に立っている。
日本語学習修了者が日本語教育業界に参入していないという話ではない。全くの逆で、海外では現地の方が日本語クラスを受け持ち、また、個人でも日本語教師志望の日本語学習修了者のことはたびたび耳にする(海外の日本語学校でのノウハウ不足は問題になっているが、そうしたケースは今回考慮に入れない)。
同じように日本語学習で苦労した身だからこそ、当事者目線で指導できるのが強みだ。
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国内の日本語学校では、卒業生が事務のアルバイトをするケースはある。卒業生は在校生にとって良いロールモデルになる。特に自学自習や進路について、場合によっては全く同じアドバイスでも日本語教師より卒業生から言われる方が説得力が増す。
ところで、卒業生の業務内容次第で日本語教師の負担をさらに減らす余地はないだろうか。授業外だけではなく授業そのものではどうだろう。
例えばクラスの巡回。
日本語教師は、特に初級前半クラスでは学生さんの反応、わからないというSOSにいち早く気づき、できるだけ疑問点を残さず授業を終えることを目標にしている。
一方、初級クラスは新任〜3年目の日本語教師が担当することも多く、教案に沿って進めるのでいっぱいいっぱいだったりする。
文化や慣習の違いで、外国人生徒のSOSを見逃してしまう可能性があるのだ。
そんなとき卒業生が、「先生、Aさんが今の説明もう一回説明してほしいみたいです」と言ってくれたらありがたい。
また、優秀な卒業生なら授業後、「先生、あの説明はわかりにくかったですよ」と生徒視点のアドバイスも期待できる。
こんなかんじで近い将来、国内の日本語学校でTT(ティーム・ティーチング)が起こるかもしれないと、わたしは予想している。
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たしかに問題点は山積みだ。
まずは人件費だ。どんなにライトな労働でも最低賃金というものがある。
それに、万が一タチの悪い卒業生を採用してしまうと、不法労働へ誘導したりしかねない。こちらのリスクはN2以上、4年制大学進学以上などと条件を決めればなんとかなる。ただそれ以前に、こうした条件に見合う卒業生を輩出しない日本語学校もある。
つまりTTは経営難、あるいは優秀な(またはポテンシャルがある)学生さんを呼び込めない日本語学校には現実的でない。
そのかわり、健全な経営のもとうまくやれば新規入学生を惹きつける制度になるかもしれない。TTのおかげで学生さんが再履修を免れるとしたら。例えばある学生さんが、再履修2回のせいで2年間で中級までしか学習できない代わりに、再履修1回で済み上級を少しかじり卒業するとする。同じ学費でより多くを学べることになる。再履修しにくいお買い得な学校として注目されれば、顧客(入学希望者)そして収入源(学費)も増える。
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近い将来、国内の日本語学校で授業中にもっと卒業生の力を借りようという動きが出るかもしれない。特に経営がうまくいっている日本語学校では、当事者目線のサポートを期待して卒業生とのTTが始まると、わたしは予想している。