2021/06/20 19:36

近い将来、日本語教師の分業化が起こるかもしれない


日本語学校の代替としてオンライン日本語レッスンに挑戦する日本語教師は増えている。新たに働く場を見つけ、雇用問題が解消されたかと思いきやそう単純でもなさそうだ。


これだけ日本語教師の労働環境が取り沙汰されているにも関わらず、Twitterを見ても日本語教師デビュー、あるいは日本語教師養成講座デビューが止まらない。日本語学校勤務が決まりそうになく、オンラインにシフトチェンジした日本語教師が一定数いるのだ。それにオンラインで始められる手軽さからひょいと参入した人もいる。


プラットフォームに登録したのに予約が入らない、激しい価格競争...そんな状態になるのもあっという間だった。


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わたしが特に心配しているのは、日本語学校勤のように指示されているわけでもないのに、給料の出ない中授業準備に追われているオンライン日本語教師の存在だ。


競争にさらされている以上、差別化をはかるための授業準備は効果的なのは理解できる反面、結局は日本語教師が搾取される舞台が日本語学校からオンライン日本語レッスンに変わっただけなのではと首を傾げてしまう。


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日本語教師には、教壇に立つなど明確に言語化された業務と、授業準備など言語化されていない業務がある(敢えてそうしている気さえする)。日本語教師が搾取されるのはもちろん後者だ。わたしはいつも日本語教師の授業準備外注化を推し進めているが、授業準備が悪なのではない。授業準備が言語化されていない業務となっているのが問題なのだ。


日本語教師が搾取から逃れるには、学生さんの夢実現のために毎日抱え込んでいる「言語化されていない業務」から一つ一つ拾い上げてリスト化し、別の人に依頼できる、または自力でやりつつ助けを求めることで現時点の給料に業務レベルを近づけることが必要だ。


わたしが現役日本語教師による教案や教材を募って販売しているのも、その一助になればと思っている。


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ただこれだけでは不十分だ。なぜなら授業準備が好きでやっている日本語教師もいるからだ。こうした努力家が報われるシステムには何がいいだろう。


先の話の繰り返しだが、授業準備が好きでやっている日本語教師が存在する。それなら

授業準備専門職として働いてもらってはどうだろう。授業準備というと裏方の響きもなくはないが、教材開発と表現するととても発展性がある。


逆に学生さんの目の前でパフォーマンスすることに、とりわけ楽しみを見出す日本語教師もいるだろう。文型の知識には自信がない代わりに、親しみやすさや傾聴力は誰にも負けないという日本語教師だっているかもしれない。


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このように日本語教師を「教材開発科教師」と「実演教師」に分化し、普段は各々業務に集中し、週に1回程度、互いのノウハウを教え合う。教材開発科教師は実演して初めて浮上する問題点を、実演教師は教案や教材にある深い深い意図をそれぞれ発見する。


実演教師は授業準備をする時間を他の労働に充て、その収入の一部を教材開発科教師に払う。あるいは、オンライン日本語レッスンプラットフォームで、1レッスン料金を2人で分割する(割合の難しさはあるがここでは割愛する)


労働環境が日本語学校からオンライン日本語レッスンに移るだけでは、誰かが搾取され続ける状況は解消されない。そう遠くない未来、日本語教師という大きな括りではなく、キャパシティや長所を活かせる複数の業種への分業化に向かって、日本語教育業界が動くのではないかと想像してみた。